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フル・インクルーシブ教育の実現にむけて
本体6,800円+税
ISBN 9784750350752
判型・ページ数 A5・416ページ
出版年月日 2020/08/31

フル・インクルーシブ教育の実現にむけて

大阪市立大空小学校の実践と今後の制度構築

障害をもつ子どもの通常教育への包摂をはかるフル・インクルーシブ教育の日本における実現の方途と今後の課題を、大阪市立大空小学校の教育実践の分析、カナダ・イギリス、日本の他の事例との比較、ケイパビリティ・アプローチを援用した理論化を通して探る。
第Ⅰ部 研究課題の提示

序論 本書の目的、背景、問題提起、意義と独自性、構成
 1.本書の目的
 2.本書の背景
 3.本書の問題提起
 4.本書の意義と独自性
 5.本書の構成

第1章 インクルーシブ教育の国際的動向と日本の障害児教育政策
 1.インテグレーション(統合)からインクルージョン(包摂)への移行
 2.イギリスのフル・インクルーシブ教育の動向(二項対立的論争)
  2.1 サッチャー政権時代
  2.2 労働党ブレア政権のフル・インクルーシブ教育
  2.3 2005年のウォーノック論文
  2.4 保守党 2010年のキャメロン政権でのフル・インクルーシブ教育偏重政策の変更
 3.インクルーシブ教育の国際的動向
 4.障害者権利条約をめぐる解釈
 5.分離・共生をめぐる対立構造(1960年代~養護学校義務化まで)
  5.1 1960年代の社会的背景
  5.2 発達保障論
  5.3 全国障害者問題研究会(全障研)と全国障害者解放運動連絡会議(全障連)の対立
  5.4 日本教職員組合(日教組)の内部対立
  5.5 金井康治闘争
 6.第1章のまとめ

第2章 インクルーシブ教育に関する先行研究レビュー
 1.先行研究レビューの方法について
 2.先行研究におけるインクルーシブ教育の定義
 3.特別支援教育への移行とフル・インクルーシブ教育の困難性
  3.1 特別支援教育への移行
  3.2 フル・インクルーシブ教育の理論構築と実現の困難性
 4.日本型インクルーシブ教育の学びの場と地域展開
  4.1 日本型インクルーシブ教育とは
  4.2 日本型インクルーシブ教育と地域展開
 5.第2章のまとめ

第3章 援用理論の提示
 1.障害モデルについて
  1.1 個人モデル(医学モデル)と社会モデル
  1.2 ICF(国際生活機能分類)モデル
 2.ケイパビリティ・アプローチとは
  2.1 センとヌスバウムのケイパビリティ・アプローチの概要
  2.2 ケイパビリティ・アプローチの教育と障害分野への援用
 3.フル・インクルーシブ教育の視点から見たケイパビリティ・アプローチと障害モデル
 4.ケイパビリティ・アプローチと発達保障論の比較検討(福島理論の援用を含む)89
  【エピソード①:支援に対する子どもの視点】
 5.第3章のまとめ

第Ⅱ部 事例研究の提示

第4章 事例紹介――大阪市立大空小学校
 1.調査方法および聞き取り調査手法の詳細
 2.大空小学校に関する先行研究
 3.戦後の大空小学校周辺の様子
 4.大空小学校の歴史とあゆみ
  4.1 住吉地区の学校区問題と開校に至るまでの経緯
  4.2 第1ステージ前半――開校時から2009年度までの4年間
  4.3 第1ステージ後半:2010年から木村泰子の退職(2015年春)までの5年間
  4.4 第2ステージのスタート:二代目校長市場達朗の時代(2015年4月~2018年3月)
 5.第4章のまとめ

第5章 大空小学校の理念、ビジョン、約束、教育方針、教育実践、学校組織・運営方法、教育手法
 1.キーワードの定義とフレームワーク
 2.大空小学校の教育理念とビジョン
 3.たった一つの約束
 4.大空小学校の教育方針
  【エピソード②:4つの力を意識した運動会の学習】
 5.大空小学校の教育方針をささえる実践
  5.1 全校道徳
  【エピソード③:全校道徳】
  5.2 ふれあい科:コンサート
  5.3 オープン講座
  【エピソード④:オープン講座 合気道】
 6.大空小学校の組織と運営
  6.1 教員の担当制とチーム制
  6.2 学校公開と地域サポーターとの協力
 7.子どもとの関わり方の手法
  7.1 子どもに寄り添い、聴く、そして伝える
  【エピソード⑤:問題解決の手法1――ケンカのあとで】
  【エピソード⑥:問題解決の手法2――ドッジボールをめぐって】
  7.2 守るべき存在としての子ども
  7.3 子ども同士の学び合い
  【エピソード⑦:子ども同士の学び合い1――重さの学習】
  【エピソード⑧:子ども同士の学び合い2――空間の学習】
 8.第5章のまとめ

第6章 大空小学校と地域・外部社会との関係性
 1.大阪市のはぐくみネット事業
 2.学社融合による学校公開と外部リソースの利用
 3.「新しい公共」型学校の実践による地域コミュニティの再生
 4.大空小学校と地域
 5.地域サポーターの事例
  5.1 三つの顔
  5.2 自分の家のような学校
  5.3 経営者の気づき
 6.学校を公開することから生まれるもの
 7.第6章のまとめ

第Ⅲ部 分析と考察

第7章 大空小学校におけるフル・インクルーシブ教育の実現の困難性の克服
 1.個人モデル(医学モデル)と発達保障論を根拠にした分離教育の存在に関して――大空小学校の障害の捉え方
 2.通常学校教育改革の実施
  2.1 この子と一緒に授業をするためにはどうしたらよいのか
  2.2 子ども同士の相互作用による支援の必要な子どもの包摂
  【エピソード⑨:子ども同士の学び合い3――授業中の関わり】
  【エピソード⑩:子ども同士の学び合い4――友だちの声】
  2.3 教員の配置手法と人員の確保
  2.4 学校公開による保護者の理解と承認
 3.機会の均等と個別支援を求める声の緊張関係
 4.大空小学校が直面している今後の課題
  4.1 フル・インクルーシブ教育に内在する緊張関係の緩和への継続的な取り組み
  4.2 他の地域からの転入者の増加傾向への対応
  4.3 重層的な構造の継承と「学習する学校」として進化するための取捨選択
 5.大空小学校の卒業生と特別支援教育を学ぶ大学生の視点
  5.1 大空小学校の卒業生の視点
  5.2 特別支援教育の教員を志望している大学生の視点
 6.第7章のまとめ

第8章 実践の帰結としてのフル・インクルーシブ教育
 1.カナダ・オンタリオ州ハミルトンにおけるフル・インクルーシブ教育の実践
  1.1 ハミルトンCDSBのフル・インクルーシブ教育の歴史
  1.2 ハミルトンCDSBのフル・インクルーシブ教育の理念と実践
 2.三つの事例と大空小学校の事例の比較
 3.第8章のまとめ

第9章 ケイパビリティ・アプローチから捉える大空小学校のフル・インクルーシブ教育
 1.ヌスバウムのケイパビリティ・アプローチから問い直すフル・インクルーシブ教育
 2.ケイパビリティ・アプローチの視点から見た大空小学校
  2.1 大空小学校の中心的なケイパビリティのリスト
  2.2 ケイパビリティの達成
 3.エイジェンシーとしての大空小学校と地域
 4.第9章のまとめ

終章 結論と提言
 1.結論
  1.1 先行研究で指摘されたフル・インクルーシブ教育の実現の困難性の克服について
  1.2 通常学校改革としての重層的な構造
  1.3 フル・インクルーシブ教育の実現のプロセス
  1.4 大空小学校の今後の課題
  1.5 本書の限界
 2.提言
  2.1 地域の中で包摂する学び合いの教育の実施
  2.2 地域・教育機関・医療機関・企業などとの連携の検討

補論 大空小学校の「命を守る学習」とは――人間の安全保障の視点からの考察
 1.人間の安全保障とは
  1.1 日本政府と人間の安全保障
  1.2 人間の安全保障と東日本大震災
   1.2.1 対岸の火事
   1.2.2 障害者の脆弱性(宮城県登米市・南三陸町の事例)
 2.大空小学校の「命を守る学習」
 3.人間の安全保障の視点から捉える大空小学校の実践
  【エピソード⑪:卒業式の日に】
 4.人間の安全保障、ケイパビリティ・アプローチ、フル・インクルーシブ教育の関係性
 5.補論のまとめ

参考文献

 付録図
  付録図-1:スクールレター(学校通信)のサンプル
  付録表-1:聞き取り調査対象者一覧表
  付録表-2:スクールレターをもとにしたキーワードの分析一覧表
  付録表-3:大空小学校の学年末の子ども・サポーターアンケート結果

 あとがき
 索引

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