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現代の理論 11秋号[Vol.29]
本体1,143円+税
ISBN 9784750334806
判型・ページ数 A5・224ページ
出版年月日 2011/10/07

現代の理論 11秋号[Vol.29]

脱原発へ 日本の針路

特集の言葉

日本では「ポスト3・11」の切断された生活、グローバルには「9・15リーマン・ショック」後の世界金融危機、内外ともに二〇一一年は天変地異の年になっている。危機は進行中でありその先行きも見えない。このため日本では家族や地域社会がもつ絆という伝統的価値の再発見、自然との共生や節約などの伝統的生活スタイルへの回帰などに向かう。「失われつつあるもの」をいとおしい気持ちで守ろうとしている。それも確かに「ポスト3・11」の大事な、旧いけれども新しい側面である。
しかし本号では、「ポスト3・11」のもうひとつの側面を強調したい。困難に立ち向かう、「蓄積された知」の力を信じることであり、それを実行する構想力を持つことである。あらゆる大災害も天災と人災の両面を持つ。今回の東日本大震災も例外ではない。日が経つにつれ、むしろ人災の要素がますます増大してきている。何が問題なのだろうか。本号の金子勝・飯田哲也と編集部のリレー対談は、まさにこの問題を明らかにしようとした企画である。

地球温暖化ガスの半減や脱原発、自然エネルギーへのシフトといった「大転換」は、何十年にもおよぶ「知の共同作業と広範な政治家・官僚・専門家・企業・市民の間での、その成果の蓄積と共有」を必要とする。またそうしたエネルギー政策や産業政策は基幹産業として広く政府・企業・学会・地域の利害に根ざしているため、たとえば「原子力村」のような強大な権力構造を作り上げている。今、福島原発事故と被災者の存在、放射性物質による広域汚染と除染への切実な願い、こうした「現実」が、かろうじて「原子力村」の権力構造の一角を壊したが、自然エネルギーへの「知の共同作業と蓄積」は、始められたばかりである。

民主党の政権交代はその成果はまだ乏しく混乱しているが、権力交代がないと、ともかくも新しい出発はない。同じように、グローバルな基準からは二〇年は遅れている、日本のエネルギー政策の「知の共同作業と蓄積」も、権力交代を必要としているだろう。しかしメディアや論壇に登場する人々は、依然として同じ人、同じ組織である。九月一九日の脱原発「六万人」デモは、大きな一歩ではあるが、問題の深刻さからして一桁少ないように思われる。百万人デモを組織する構想力と市民社会の力、これこそがまだ日本に欠けているものである。

脱原発へ知の共同作業を

 特集の言葉

[特集 脱原発ヘ 日本の針踊]
 ・対談 脱原発ヘ 日本政治の革新を(飯田哲也:環境エネルギー政策研究所所長×金子勝:慶応大学教授×住沢博紀:日本女子大学教授)
 ・ドイツ政府閣議決定要綱 未来のエネルギーへの道(本誌編集部)
 ・脱原子力社会ヘ(長谷川公一:東北大学教授)
 ・原子力経済と原子力政治の見直しを(井田徹治:共同通信編集委員会)
 ・「原子力推進複合体」の形成(秋元健治:日本女子大学准教授)
 ・問われる人間への想像力(橘川俊忠:神奈川大学教授)
 ・原発責任と戦争責任(千本秀樹:筑波大学教授)
 ・自治体発のエネルギー転換への道筋(保坂展人:東京都世田谷区長)
 ・司法の原発責任を問う~井戸謙一(西村秀樹:ジャーナリスト)
 ・大震災と「社会的事業所促進法」の緊要性(柏井宏之:共生型経済推進フォーラム)
 ・低線量の被曝への恐怖感は当然(福島肇:『柏崎・刈羽科学者の会』会員)
 ・対談 日本政治「最後の希望」はどこへ行ったか(早野透:桜美林大学教授×橘川俊忠)


[深層]
 ・震災からみえてくる「脱・戸籍」の要請(遠藤正敬:早稲田大学招請研究員)

[文化時評]
 ・なでしこジャパン、『西海原子力発電所』(陣野俊史:批評家)

[ある視角]
 ・野田“増税”内閣――「国家の信用」を懸けた瀬戸際の勝負(小林良暢:グローバル総研所長)

[想うがままに]
 ・追悼 赤松徳治さん(小寺山康雄:本誌編集委員)

[この一冊]
 ・金井淑子著『依存と自立の倫理』(池田祥子:こども教育宝仙大学教授)
 ・J・W・ゴフマン著 今中哲二、小林圭二他訳『新装版 人間と放射線』(喜多村俊樹:ジャーナリスト)
 ・松下和夫著『地球環境学への旅』(河野博子:ジャーナリスト)

 ・米国は、そして世界はどこへ?(金子敦郎:国際問題ジャーナリスト)
 ・続「トヨタ・イン・フィリピン」(遠野はるひ:フィリピントヨタ労組を支援する会)
 ・教育再生への道を探る 生きるための「教育改革」へ[下](玉田勝郎:関西大学教授)
 ・どうして米騒動は起こったか(鈴木健二:城西国際大学客員教授)
 ・情報革命がもたらす新しい社会(蒲生猛)
 ・シベリア抑留問題究明はどこまで(富田武:成蹊大学教授)

 2012新春号[Vol.30]予告
 編集後記

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