ホーム > 盲ろう者として生きて
盲ろう者として生きて
本体2,800円+税
ISBN 9784750334332
判型・ページ数 A5・512ページ
出版年月日 2011/07/30

盲ろう者として生きて

指点字によるコミュニケーションの復活と再生

幼くして視覚を、ついで聴覚を喪失し、深い失意と孤独の中に沈んでいた著者が「指点字」という手段によって他者とのコミュニケーションを回復し、再生するに至るまでを綿密にたどり直した自伝的論文。人間にとって他者とのつながりがいかに大切かが分かる本。

 

エピソード紹介

 

障害や障害者について考え抜いた末、著者は次のように述べます。

みんな一様なものからはなんの進歩も生まれない。また異なるものをただ一様にならそうとする努力からも、なんの進歩も生まれないだろう。

われわれは障害者である。[同時に]普通人と同じ人間である。……そこに『異なっている』という意識から生まれた、両者を貫く共通の何かを把握する力を持たねばならぬと思う。

 

福島智氏は、自身、短編小説やエッセイのほか、詩作もする旺盛な表現者です。氏の「指先の宇宙」という詩を紹介すると

「指先の宇宙」

ぼくが光と音を失ったとき
そこにはことばがなかった
そして世界がなかった
ぼくは闇と静寂の中でただ一人
ことばをなくして座っていた
ぼくの指にきみの指が触れたとき
そこにことばが生まれた
ことばは光を放ちメロディーを呼び戻した
ぼくが指先を通してきみとコミュニケートするとき
そこに新たな宇宙が生まれた
ぼくは再び世界を発見した
コミュニケーションはぼくの命
ぼくの命はいつもことばとともにある
指先の宇宙で紡ぎ出されたことばとともに

 

推薦文

言葉は私たちの目や耳にではなく、
魂にこそ従属しているものだと、
福島さんは文字通り身をもって立証する。
その生き生きとしたドラマティックな過程は、
そのまま今の言語状況に対する批評になっている。

――谷川俊太郎(詩人)

 まえがき


第I部 盲ろう者研究と本書の性格

 第1章 「盲ろう者」という存在と先行研究の概況
  1-1 「盲ろう」の世界と盲ろう者という存在
  1-2 盲ろう者をめぐる先行研究の概況とその問題点

 第2章 本研究の目的と方法
  2-1 目的
  2-2 方法
  2-3 資料作成における手続きと記述上の方針


第II部 福島智における視覚・聴覚の喪失と「指点字」を用いたコミュニケーション再構築の過程

 II-1 出生から盲ろう者になるまで

 第3章 失明に至るまで(0歳~9歳:1962年末~1972年夏)
  3-1 右目の失明
  3-2 隻眼で幼稚園に――わんぱくぶりを発揮
  3-3 休みがちな小学校通学――しかし、相変わらずわんぱく
  3-4 失明へ

 第4章 失明から失聴へ(9歳~17歳:1972年夏~1980年初め)
  4-1 失明後の自宅療養、そして盲学校入学――「楽しみ」は自分でつくる
  4-2 全盲生としての生活
  4-3 右耳の失聴と「障害」についての思索

 II-2 失聴――盲ろう者として生きる

 第5章 失聴へ(17歳~18歳:1980年6月~1981年1月)
  5-1 失聴前夜
  5-2 治療方針をめぐる特殊事情――西洋医学と東洋医学のはざまで
  5-3 希望と絶望の間の振動
  5-4 「男版ヘレン・ケラーになりそうや」――聴力低下への不安
  5-5 運動療法に励む

 第6章 聴力低下と内面への沈潜(18歳:1981年1月~同3月)
  6-1 下降――聴力の低下に呻吟する
  6-2 諦観――絶望の中での逆説的平安
  6-3 読書と思索を通して自分なりの「結論」へたどりつく

 第7章 「指点字」の考案(18歳:1981年3月)
  7-1 指点字以外のコミュニケーション方法――カード、点字タイプライター、音声
  7-2 考案――「指点字」はいつ、どのようにして考案されたのか
  7-3 指点字はなぜ考案できたのか、そして考案直後の状況

 第8章 学校復帰――指点字を中心とした生活の始まり(18歳:1981年3月下旬~同4月)
  8-1 不安を抱えての上京、友人らとの再会
  8-2 智の「受け入れ」の準備
  8-3 O病院への入院、担任との面談

 第9章 再び絶望の状態へ――集団の中での孤独な自己の発見(18歳:1981年4月~同7月)
  9-1 智は自身が「壷の中」にいると感じる
  9-2 バレーボールの見学で――「沈黙」の中で智は孤独の深淵を見る
  9-3 クラスメート、教師、令子は当時の智をどう見ていたか

 第10章 再生――指点字通訳によるコミュニケーションの再構築(18歳:1981年7月~同9月)
  10-1 喫茶店での出来事――「指点字通訳」の始まり
  10-2 「飛躍」の背景
  10-3 「飛躍」をもたらしたきっかけは何だったのか
  10-4 「指点字通訳」はなぜ画期的なのか
  10-5 「飛躍」はどうして生じたのか


第III部 分析と考察

 第11章 文脈的理解の喪失と再構築の過程
  11-1 「コミュニケーションの希薄化」としての視覚・聴覚の喪失過程
  11-2 盲ろう者の認識世界と「感覚遮断研究」
  11-3 視覚・聴覚の喪失と「感覚的情報の文脈」の喪失
  11-4 コミュニケーションを支える文脈的理解
  11-5 視覚・聴覚を代替する複合的文脈――「感覚・言語的情報の文脈」

 第12章 根元的な孤独とそれと同じくらい強い他者への憧れの共存
  12-1 なぜ生きるのか――与えられているいのち
  12-2 障害と苦悩の意味
  12-3 他者の存在と他者によるケア・サポート
  12-4 孤独と憧れのダイナミズム

 引用・参照文献
 謝辞
 あとがき

同じジャンルの本

このページのトップへ