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ラティーノのエスニシティとバイリンガル教育
本体3,900円+税
ISBN 9784750331782
判型・ページ数 A5・264ページ
出版年月日 2010/03/01

ラティーノのエスニシティとバイリンガル教育

現在、米国最大のマイノリティとなったラティーノ(ラテンアメリカ系住民)。言語文化的伝統に象徴される彼らのエスニシティが、公教育の枠組みの中でどのように位置づけられてきたのかについて、南西部諸州のバイリンガル教育の事例を中心に分析する。
序章 本研究の課題と方法
 第1節 研究課題をめぐる背景と視座
  バイリンガル教育前史――征服と言語
  バイリンガル教育をめぐる運動と法制化
  具体的問題設定と本研究の意義
 第2節 先行研究の検討
  米国における研究実績
  日本における研究実績
 第3節 研究方法
 第4節 論文の構成

第 I 部 エスニック・マイノリティ集団としてのラティーノ

第1章 ラティーノの人口規模と社会的地位
 第1節 代表的な集住地域とサブグループ
 第2節 社会経済的指標にみるラティーノの現況
  所得水準
  学歴とドロップアウト率
  10代出産率と無料ランチ受給率
 第3節 人口増による勢力伸張と政界への進出

第2章 人口増加過程の歴史社会的概観――米国最大のエスニック・マイノリティ集団となるまでの軌跡
 第1節 「占領されしアメリカ」の民として
  テキサスの独立と米国への併合
  米墨戦争
  グァダルーペ・イダルゴ条約とガスデン購入
 第2節 制約の少なかった時代
 第3節 メキシコ契約農民とキューバ難民の受け入れ
  ブラセロ協定の締結
  キューバ革命と難民
 第4節 不法移民の増加と社会的顕在化
  契約農民・亡命者から「招かれざる客」へ
  中米難民の流入
  「失われた10年」の影響
 第5節 より広範な労働市場への参入

第3章 呼称と言語使用にみるエスニシティの表出
 第1節 呼称をめぐるエスニシティと政治性
  「ラティーノ」か「ヒスパニック」か
  エスニック・アイデンティティと呼称
  集住地域による相違
  時代による呼称選択傾向の変化
  スペイン語新聞紙上での呼称選択――反移民法抗議行動の報道から
  ラテンアメリカ諸国とラティーノ社会
 第2節 エスニック言語の保持と重層化するアイデンティティ
  言語使用状況
  バイリンガリズムと社会的影響力

第II部 バイリンガル教育の制度的変遷と理論的基盤

第4章 バイリンガル教育法制化までの道程
 第1節 米国における多民族社会の発展過程と言語教育
  萌芽期のバイリンガル教育
  マイノリティ統合政策としての英語単一教育
 第2節 キューバ難民とバイリンガル教育
 第3節 マイノリティ運動の高揚とバイリンガル教育の法制化
  公民権運動からチカーノ運動へ
  「バイリンガル教育法」の成立

第5章 英語単一教育の復活――言語的同化による国民統合の標榜
 第1節 新保守派の台頭と英語公用語化運動
 第2節 ラティーノ内部における同化志向
 第3節 リベラル多元主義と英語単一教育
 第4節 英語単一主義の浸透と「バイリンガル教育法」の廃止

第6章 バイリンガル教育の理論とモデル
 第1節 言語と学力――理論的背景を中心に
  カミンズの仮説
  スノウとハクタの調査研究
  クラシェンの第二言語習得論
  マイヤーとステュワートの調査と「質」をめぐる課題
 第2節 バイリンガル教育プログラム――到達目標と成果
  プログラム・モデル
  「双方向イマージョン式」プログラム

第III部 ラティーノ集住地域におけるバイリンガル教育の特色

第7章 カリフォルニア州の「双方向イマージョン式」プログラム――バイリンガル教育廃止後の新たな取り組み
 第1節 言語マイノリティと教育
 第2節 バイリンガル教育廃止法案の成立
 第3節 「双方向イマージョン式」プログラムの光と影
  プログラムをめぐる議論
  プログラムの特色と有効性
 第4節 マグネット・スクールとしてのセサル・チャべス小学校
  設立経緯
  二言語・二文化環境の促進学業成績
 第5節 混在クラスの重要性

第8章 ニューメキシコ州のバイリンガル・多文化教育政策――エスニシティと母語を重視したプログラムの推進
第1節 「イスパノ」・「ヒスパニック」としてのエスニシティ
第2節 行政によるバイリンガル・多文化教育の推進
 ラティーノの社会進出と州の言語文化政策
 州公教育局の方針と歴史的経緯
 「全米ヒスパニック文化センター」の設立と言語文化教育の振興
第3節 5つのバイリンガル教育プログラム

第9章 フロリダ州におけるイングリッシュ・プラス政策――キューバ系の集住するマイアミ-デイド郡の事例
 第1節 マイアミ-デイド郡の人口構成
 第2節 反バイリンガル条例
 第3節 「英語+1言語」キャンペーン
 第4節 バイリンガル教育の浸透と成果
  多様なプログラム
  「双方向イマージョン式」プログラム採用校
 第5節 グローバル化時代のバイリンガリズム

終章 越境的エスニシティの拡がりと言語マイノリティ教育をめぐって
 第1節 本研究の総括
 第2節 自律的融合のための言語文化教育とは

 参考文献一覧
 あとがき
 事項索引
 人名索引
 図表・資料一覧

図1-1 ラティーノ人口のサブグループ
図1-2 人種・エスニック集団に占める貧困層の割合(2007年)
図1-3 人種・エスニック集団別の平均所得(2003-05年)
図1-4 高校のドロップアウト率(16-24歳/1989-2005年)
図1-5 サブグループ別の高校ドロップアウト率(16-19歳/2000年)
図1-6 学士以上の学歴保有者の割合(25歳以上/1990-2005年)
図1-7 人種・エスニック集団と学歴別失業率(16歳以上/2005年)
図1-8 10代女性の出産率(15-19歳1,000人あたり/1980-2004年)
図1-9 全米各州におけるラティーノ人口の割合(2000年国勢調査時)
図2-1 米墨間における土地割譲と領有権の推移
図3-1 小学校~高校に通う児童・生徒の言語使用状況(2005年)
図3-2 家庭での使用言語と英語運用能力(5歳以上/2004年)
図5-1 英語を公用語に定める州
図6-1 双頂氷山に例えられる相互依存原理仮説
図6-2 カミンズの共通基底能力モデル
図6-3 カミンズの閾仮説
図6-4 米国における「双方向イマージョン式」プログラム実施校数の推移(1963-2008年)
図7-1 カリフォルニア州における「双方向イマージョン式」バイリンガル教育実施校数の推移
図7-2 「双方向イマージョン式」バイリンガル教育長期プログラム実施校と学校評価指数(API)による州内ランク

表1-1 ラティーノ人口の多い州(2003年)
表1-2 人種・エスニック集団別「無料・減額ランチ」受給児童の割合(小学校4年生/2005年)
表1-3 ラティーノ人口が総人口に占める割合の高い州(2000年)
表3-1 ニューヨークタイムズ紙における各呼称の使用頻度(1951-2000年)
表6-1 コリン・ベーカーによるバイリンガル教育プログラムの分類
表7-1 最低ランクにある長期プログラム実施校(8校)の特色(1999-2000年)
表7-2 セサル・チャベス校と学区全体の学年別SAT/9平均得点の比較(2000年)
表7-3 ラティーノEL児童に関するSAT/9平均得点(科目別)の比較
表8-1 バイリンガル教育プログラムの対象と授業時間
表9-1 LEP児童・生徒の出身国(2000-01年)
表9-2 LEP児童・生徒の母語(2000-01年)
表9-3 バイリンガル教育プログラム別登録者数(2000-03年)
表9-4 児童・生徒の人種・エスニック別内訳と総数(2000-03年)
表9-5 BISO7校における児童の状況と州による評価

資料7-1“El Noticiero”英語版
資料7-2“El Noticiero”スペイン語版

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