本体3,800円+税
ISBN | 9784750330112 |
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判型・ページ数 | 4-6・468ページ |
出版年月日 | 2009/07/01 |
ディアスポラから世界を読む
離散を架橋するために
人文社会科学においてディアスポラはいかに有効な概念となりうるか。西欧近代のみならず、「在日」朝鮮人、華僑、回族、沖縄・奄美等のディアスポラから、東アジアの経験を捉える。陳腐化と再-中心化に注意を払いながらディアスポラ研究の最先端を示す。
まえがき
序論 「方法としてのディアスポラ」の可能性(臼杵陽)
はじめに――問題の設定
1 ディアスポラの定義におけるユダヤ的刻印
2 なぜディアスポラなのか?
3 ディアスポラ研究の学問的制度化?
4 イスラーム世界の「ディアスポラ」
5 日本の「ディアスポラ」
6 方法としてのディアスポラ
7 移民、国民国家、市民権
8 グローバリズムとディアスポラ
おわりに
I ディアスポラと西洋近代
序 ディアスポラについて、つねに複数として、かつ横断的に思考する(鈴木慎一郎)
第一章 追放から離散へ――現代ユダヤ教における反シオニズムの系譜(赤尾光春)
はじめに
1 追放から離散へ
2 現代ユダヤ教における反シオニズムの系譜
おわりに――中心と周縁のモデルからフロンティア・モデルへ
第二章 故郷を創る――アルメニア近代史に見るナショナリズムとディアスポラ(吉村貴之)
はじめに――ナショナリズムとディアスポラに関する研究史
1 政治ディアスポラの発生
2 「第一共和国」とオスマン・アルメニア人エリート
3 ソヴィエト政権と民主自由党の「接近」
おわりに
第三章 「三度目で最後の大陸」にいたるまで――カルムイク・ディアスポラの四〇〇年(荒井幸康)
1 モンゴル人とディアスポラ
2 カルムイク人の移住と帰還――二〇世紀までのカルムイク人
3 「故郷」とのつながり
4 ヨーロッパに散らばるカルムイク人
5 三度目で最後の大陸へ
おわりに
第四章 ユダヤ・ディアスポラとブラック・ディアスポラ――比較・類比・鏡(浜邦彦)
はじめに
1 「二一世紀の絶滅収容所」――比較と類比の問題
2 ヨーロッパの内なる他者
3 ヨーロッパの外なる他者
4 ホロコーストと奴隷制
5 女々しく生き延びること
6 帰還と約束
おわりに――鏡としてのディアスポラ
第五章 ディアスポラと本来性――近代的時空間の編制と国民/非国民(早尾貴紀)
はじめに――近代国民国家とディアスポラ
1 ヘーゲル左派の社会哲学と挫折した市民革命、そして人種主義
2 ハイデガーとアーレントにおける背反する「故郷喪失」
3 ヘーゲルから二〇〇年後に現代パレスチナ/イスラエルを考える
おわりに――ヘーゲルから二〇〇年後に「ディアスポラ」と「市民権」を考える
II 東アジアにおけるディアスポラ
序 「振り返ってみると」と「ふと気がつくと」――ディアスポラを書くことの認識論(丸川哲史)
第六章 離散と集合の雲南ムスリム――ネイション・ハイブリディティ・地縁血縁としてのディアスポラ(木村自)
はじめに
1 問題の所在――イエン・アングによるディアスポラ議論から
2 雲南ムスリムの移住史
3 「華僑」としての雲南ムスリム――ネイションとディアスポラ
4 異郷に故郷を築くこと――異種混淆性としてのディアスポラ
5 イスラームの宗教実践と移住経験の共有
おわりに――ディアスポラにおける「差異の共存」とは何か
第七章 韓国華僑の外なる「故郷」と内なる「祖国」(王恩美)
はじめに
1 東アジアの冷戦構造の形成
2 韓国社会からの排除
3 「祖国」の必要性
4 内なる「故郷」と外なる「祖国」へ
おわりに
第八章 民族と国民のあいだ――韓国における在外同胞政策(金友子)
はじめに
1 離散過程と分布
2 解放後韓国の在外「同胞」政策
3 「在外同胞の出入国と法的地位に関する法律」
おわりに
第九章 否定の民族主義のゆくえ――在日朝鮮人とディアスポラ(洪貴義)
1 コリアン・ディアスポラと在日
2 歴史的問題、政治的諸権利
3 移動の自由、実存的な問い
4 李珍宇論
5 在日文学とカフカ
6 フッサール、否定の民族主義
第一〇章 「脱線」からアチャラカへ――下町の「辺境」三ノ輪“界隈”の文化(本山謙二)
1 「郊外」/「辺境」そして“界隈”の文化
2 「東京周縁」の文化と毒蝮三太夫
3 写真家たち
4 「祈る街」/人が入れ替わる街
5 場(place)そして「脱線」(slippage)へ
6 ヤマで練り上げられた「寄せ場」という言葉
7 通称の街――山谷と吉原
8 「脱線」すること
9 「脱線トリオ」
10 テント村と野宿者襲撃
おわりに――「脱線」から「てんぷく」へ
付録 「ディアスポラ」のディアスポラ(ロジャーズ・ブルーベイカー)
「ディアスポラ」の増殖
「ディアスポラ」の基準
根本的な断絶はあるか
実体か、それとも態度か
結論
注