本体3,700円+税
ISBN | 9784750345956 |
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判型・ページ数 | A5・232ページ |
出版年月日 | 2017/12/10 |
社会的養護のもとで育つ若者の「ライフチャンス」
選択肢とつながりの保障、「生の不安定さ」からの解放を求めて
永野 咲 著
社会的養護という制度のもとで育つ子どもたちはその後どのような生活をしているのか。それについての正確なデータはない。
彼らの退所後の生活状況についての評価は、実は社会的養護の評価、つまりケアが適切であったかどうかを評価する上で欠かせないのではないか、という問題意識のもと、英国の社会的養護の大改革のゴールである「ライフチャンス」という概念を使って、量的データ、質的調査両面から社会的養護が保障すべきものは何かを明らかにしようとした意欲作。
彼らの退所後の生活状況についての評価は、実は社会的養護の評価、つまりケアが適切であったかどうかを評価する上で欠かせないのではないか、という問題意識のもと、英国の社会的養護の大改革のゴールである「ライフチャンス」という概念を使って、量的データ、質的調査両面から社会的養護が保障すべきものは何かを明らかにしようとした意欲作。
はじめに
序章 社会的養護のもとで育つ若者の困難を捉える
(1)社会的養護を経験した若者の困難
1 社会的養護の役割
2 社会的養護を経験した若者の困難
(2)本書の目的:解決の糸口を探る
1 措置解除後の生活実態を把握する
2 新たな方策を探る
(3)本書の視座
1 社会的養護の形態論争を超えて
2 入所理由――虐待の程度論争を超えて
(4)本書の構成
第1章 新たな概念「ライフチャンス」の導入
(1)英国・社会的養護領域におけるライフチャンスへの注目
1 「ライフチャンスの保障」が生んだ社会的養護改革
2 政策目標となった「ライフチャンスの保障」
3 改革がもたらした変化
(2)ダーレンドルフの「ライフ・チャンス」
1 ラルフ・ダーレンドルフ(Ralf Dahrendorf)
2 ダーレンドルフのライフチャンス概念
3 オプション(options)とリガチュア(ligatures)
4 ライフチャンスの高度化
(3)先行研究で使用される「ライフチャンス」
1 英国・社会的養護領域での「ライフチャンス」
2 日本の子ども・若者の領域における「ライフチャンス」
(4)本書におけるライフチャンスの定義と理論的特徴
1 ダーレンドルフの「ライフチャンス」概念の功績
2 本書におけるライフチャンスの定義
第2章 社会的養護措置解除後の生活状況に関するこれまでの研究
(1)海外における措置解除後の生活状況に関する量的把握
1 英国における調査
2 米国における調査
(2)日本における措置解除後の生活状況に関する量的把握
1 青少年福祉センターによる調査
2 全国児童養護施設協議会による調査
3 北海道養護施設協議会による調査
4 東京都社会福祉協議会児童部会調査研究部による調査
(3)措置解除後の生活状況に関する質的把握
1 松本による「袋小路的生活構造」
2 長谷川による「安定度」
3 全国社会福祉協議会による聞き取り調査
4 西田・妻木・長瀬・内田による「家族依存社会の臨界」
5 谷口による「排除と脱出」
6 伊部による「生活と家族関係・社会関係」
7 退所者のアイデンティティに関する研究
8 他領域の調査からの接近
(4)小括:先行研究による成果と限界
1 量的調査の不十分さ
2 質的把握の成果と到達点
3 ライフチャンス概念の導入
第3章 社会的養護措置解除後の生活実態とデプリベーション――ライフチャンスの量的把握
(1)量的把握の方法
1 自治体調査と捉えた退所者の層――二次分析の前提
2 施設職員記入式調査の実施――一次調査の実施
3 分析の方法
(2)退所者のオプションの状況
1 教育機会:高い高校中退率と大学等進学の格差
2 就職機会:高い有業率と低い非正規雇用率
3 生活移行:困難な職業と住居への移動
4 経済:退所者の高い生活保護受給率
(3)退所者のリガチュアの状況
1 施設とのつながり:途絶えるつながり
2 周縁化:特別なニーズを抱える退所者
(4)小括:ライフチャンス・デプリベーション
第4章 社会的養護のもとで育った21人へのインタビュー調査――ライフチャンスの質的把握の方法
(1)インタビュー調査の方法
1 調査協力者の選定
2 調査の実施
3 倫理的配慮
(2)分析の方法
1 分析方法の選定
2 分析の手順
(3)ライフチャンスを構成する概念的カテゴリー
1 オプションに関する2つの概念的カテゴリーの構成と特徴
2 リガチュアに関する3つの概念的カテゴリーの構成と特徴
3 概念的カテゴリー「生の不安定さ」の構成と特徴
(4)調査協力者のタイプ分け
1 分類軸の設定
2 調査協力者の入退所のパターン
3 調査協力者の4つのタイプ
(5)共時的分析:事例-コード・マトリックスによる分析
1 入所前のライフチャンスを表すコードとタイプの特徴
2 入所中のライフチャンスを表すコードとタイプの特徴
3 退所後のライフチャンスを表すコードとタイプの特徴
(6)小括:ライフチャンスを構成する概念的カテゴリーの関係
第5章 社会的養護のもとで育った若者のライフチャンス――ライフチャンスの質的把握
(1)通時的分析:タイプによる分析
1 家庭復帰タイプ(A,B,C,D,H,L)
2 家庭からの入所・退所タイプ(E,F,G,R)
3 再保護タイプ(O,P,Q,S,T,U)
4 乳児院からの入所・退所タイプ(I,J,K,M,N)
(2)ライフチャンスと「生の不安定さ」
1 混乱する「生」:家庭復帰タイプ
2 否定される「生」:家庭からの入所・退所タイプ/再保護タイプ
3 不明である「生」:乳児院からの入所・退所タイプ
4 「肯定にむかう生」の過程
(3)小括:ライフチャンスの質的状況
1 タイプごとのライフチャンス
2 ライフチャンスに影響をもたらす「生の不安定さ」
終章 結論:社会的養護におけるライフチャンス保障
(1)社会的養護におけるライフチャンスの構造とダーレンドルフとの差異
1 2つのオプションと3つのリガチュア
2 「生の不安定さ」の存在
(2)社会的養護のもとでのライフチャンス
1 社会的養護のもとで回復するライフチャンス
2 社会的養護のもとでのライフチャンスの制限
(3)社会的養護におけるライフチャンス保障にむけた社会の課題
1 社会的養護のもとで育った若者の「ライフチャンス・デプリベーション」
2 オプションの制度的底上げ
3 社会の中での新たなリガチュア
4 ライフチャンスの基盤となる「生」の重要性
(4)本書の到達点と残された課題
おわりに
初出一覧
引用文献
参考文献
序章 社会的養護のもとで育つ若者の困難を捉える
(1)社会的養護を経験した若者の困難
1 社会的養護の役割
2 社会的養護を経験した若者の困難
(2)本書の目的:解決の糸口を探る
1 措置解除後の生活実態を把握する
2 新たな方策を探る
(3)本書の視座
1 社会的養護の形態論争を超えて
2 入所理由――虐待の程度論争を超えて
(4)本書の構成
第1章 新たな概念「ライフチャンス」の導入
(1)英国・社会的養護領域におけるライフチャンスへの注目
1 「ライフチャンスの保障」が生んだ社会的養護改革
2 政策目標となった「ライフチャンスの保障」
3 改革がもたらした変化
(2)ダーレンドルフの「ライフ・チャンス」
1 ラルフ・ダーレンドルフ(Ralf Dahrendorf)
2 ダーレンドルフのライフチャンス概念
3 オプション(options)とリガチュア(ligatures)
4 ライフチャンスの高度化
(3)先行研究で使用される「ライフチャンス」
1 英国・社会的養護領域での「ライフチャンス」
2 日本の子ども・若者の領域における「ライフチャンス」
(4)本書におけるライフチャンスの定義と理論的特徴
1 ダーレンドルフの「ライフチャンス」概念の功績
2 本書におけるライフチャンスの定義
第2章 社会的養護措置解除後の生活状況に関するこれまでの研究
(1)海外における措置解除後の生活状況に関する量的把握
1 英国における調査
2 米国における調査
(2)日本における措置解除後の生活状況に関する量的把握
1 青少年福祉センターによる調査
2 全国児童養護施設協議会による調査
3 北海道養護施設協議会による調査
4 東京都社会福祉協議会児童部会調査研究部による調査
(3)措置解除後の生活状況に関する質的把握
1 松本による「袋小路的生活構造」
2 長谷川による「安定度」
3 全国社会福祉協議会による聞き取り調査
4 西田・妻木・長瀬・内田による「家族依存社会の臨界」
5 谷口による「排除と脱出」
6 伊部による「生活と家族関係・社会関係」
7 退所者のアイデンティティに関する研究
8 他領域の調査からの接近
(4)小括:先行研究による成果と限界
1 量的調査の不十分さ
2 質的把握の成果と到達点
3 ライフチャンス概念の導入
第3章 社会的養護措置解除後の生活実態とデプリベーション――ライフチャンスの量的把握
(1)量的把握の方法
1 自治体調査と捉えた退所者の層――二次分析の前提
2 施設職員記入式調査の実施――一次調査の実施
3 分析の方法
(2)退所者のオプションの状況
1 教育機会:高い高校中退率と大学等進学の格差
2 就職機会:高い有業率と低い非正規雇用率
3 生活移行:困難な職業と住居への移動
4 経済:退所者の高い生活保護受給率
(3)退所者のリガチュアの状況
1 施設とのつながり:途絶えるつながり
2 周縁化:特別なニーズを抱える退所者
(4)小括:ライフチャンス・デプリベーション
第4章 社会的養護のもとで育った21人へのインタビュー調査――ライフチャンスの質的把握の方法
(1)インタビュー調査の方法
1 調査協力者の選定
2 調査の実施
3 倫理的配慮
(2)分析の方法
1 分析方法の選定
2 分析の手順
(3)ライフチャンスを構成する概念的カテゴリー
1 オプションに関する2つの概念的カテゴリーの構成と特徴
2 リガチュアに関する3つの概念的カテゴリーの構成と特徴
3 概念的カテゴリー「生の不安定さ」の構成と特徴
(4)調査協力者のタイプ分け
1 分類軸の設定
2 調査協力者の入退所のパターン
3 調査協力者の4つのタイプ
(5)共時的分析:事例-コード・マトリックスによる分析
1 入所前のライフチャンスを表すコードとタイプの特徴
2 入所中のライフチャンスを表すコードとタイプの特徴
3 退所後のライフチャンスを表すコードとタイプの特徴
(6)小括:ライフチャンスを構成する概念的カテゴリーの関係
第5章 社会的養護のもとで育った若者のライフチャンス――ライフチャンスの質的把握
(1)通時的分析:タイプによる分析
1 家庭復帰タイプ(A,B,C,D,H,L)
2 家庭からの入所・退所タイプ(E,F,G,R)
3 再保護タイプ(O,P,Q,S,T,U)
4 乳児院からの入所・退所タイプ(I,J,K,M,N)
(2)ライフチャンスと「生の不安定さ」
1 混乱する「生」:家庭復帰タイプ
2 否定される「生」:家庭からの入所・退所タイプ/再保護タイプ
3 不明である「生」:乳児院からの入所・退所タイプ
4 「肯定にむかう生」の過程
(3)小括:ライフチャンスの質的状況
1 タイプごとのライフチャンス
2 ライフチャンスに影響をもたらす「生の不安定さ」
終章 結論:社会的養護におけるライフチャンス保障
(1)社会的養護におけるライフチャンスの構造とダーレンドルフとの差異
1 2つのオプションと3つのリガチュア
2 「生の不安定さ」の存在
(2)社会的養護のもとでのライフチャンス
1 社会的養護のもとで回復するライフチャンス
2 社会的養護のもとでのライフチャンスの制限
(3)社会的養護におけるライフチャンス保障にむけた社会の課題
1 社会的養護のもとで育った若者の「ライフチャンス・デプリベーション」
2 オプションの制度的底上げ
3 社会の中での新たなリガチュア
4 ライフチャンスの基盤となる「生」の重要性
(4)本書の到達点と残された課題
おわりに
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引用文献
参考文献
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