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文化接触における場としてのダイナミズム
本体3,000円+税
ISBN 9784750343525
判型・ページ数 A5・192ページ
出版年月日 2016/06/04

文化接触における場としてのダイナミズム

「家族」「学校」「地域」など、異文化間教育が実践される「場」に焦点をあて、場と個の相互作用や力動的な関係に重点を置きながらこれまで蓄積してきた成果をレビュー。異文化間教育学の大系化を図るとともに今後の研究を展望し、新たな知の創出を試みる。

 

【執筆者一覧】

加賀美常美代(かがみ とみよ)
お茶の水女子大学基幹研究院教授
『多文化社会における葛藤解決と教育価値観』(単著、ナカニシヤ出版、2007年)、『多文化共生論――多様性理解のためのヒントとレッスン』(編著、明石書店、2013年)。

徳井厚子(とくい あつこ)
信州大学教育学部教授
『多文化共生のコミュニケーション』(単著、アルク、2002年)、「複言語サポーターはどのように複数の言語を使用しているのか――語りからみえてくるもの」『多言語多文化――実践と研究』第6号(東京外国語大学多言語・多文化教育研究センター、2014年、24-42)。

松尾知明(まつお ともあき)
国立教育政策研究所・初等中等教育研究部・総括研究官
『多文化教育をデザインする――移民時代のモデル構築』(編著、勁草書房、2013年)、『多文化教育がわかる事典――ありのままに生きられる社会をめざして』(単著、明石書店、2013年)

恒吉僚子(つねよし りょうこ)
東京大学教育学研究科・教授、東京大学教育学部附属中等教育学校・学校長(2016-17年度)
The Japanese Model of Schooling: Comparisons with the United States(単著、Routledge、2001)、『人間形成の日米比較――かくれたカリキュラム』(単著、中央公論社、1992年)。

宇土泰寛(うと やすひろ)
椙山女学園大学教育学部教授学部長
『地球号の子どもたち――宇宙船地球号と地球子供教室』(単著、創友社、2000年)、『地球時代の教育――共生の学校と英語活動』(単著、創友社、2011年)

児島 明(こじま あきら)
鳥取大学地域学部准教授
『ニューカマーの子どもと学校文化――日系ブラジル人生徒の教育エスノグラフィー』(単著、勁草書房、2006年)、『外国人生徒のためのカリキュラム――学校文化の変革の可能性を探る』(共編著、嵯峨野書院、2006年)。

拝野寿美子(はいの すみこ)
神奈川大学人間科学部非常勤講師
『ブラジル学校の子どもたち――日本かブラジルかを超えて』(単著、ナカニシヤ出版、2010年)、「地域共生世代を育むブラジル人学校――多文化共生アクターとして」牛田千鶴(編著)『南米につながる子どもたちと教育――複数文化を「力」に変えていくために』(共著、行路社、2014年)。

岸田由美(きしだ ゆみ)
金沢大学理工研究域准教授
「在日韓国・朝鮮人教育にみる『公』の境界とその移動」(『教育学研究』第70巻第3号,2003年,pp.348・359)、「多様性と共に生きる社会と人の育成――カナダの経験から」(馬淵仁編著『「多文化共生」は可能か――教育における挑戦』勁草書房,2011年,pp.106-123)。

平井達也(ひらい たつや)
立命館アジア太平洋大学教育開発学修支援センター准教授
「キャリアカウンセリングにおける文化的視点の重要性」(単著、『異文化間教育』33号,2011年)。“Counseling across differences and diversity”( Mick Cooper, Maureen O'Hara, Peter F. Schmid, and Arthur Bohart eds. The Handbook of Person-Centred Psychotherapy and Counselling, Palgrave Macmillan, 2013)。

生田周二(いくた しゅうじ)
奈良教育大学次世代教員養成センター教授
『統合ドイツの異文化間ユースワーク』(単著、大空社、1998年)、『生涯学習の観点から見た異文化間教育――シティズンシップ教育との関連において』(『異文化間教育』第31号、2010年)。

序章 文化接触の場としてのダイナミズム

第1章 「場」としての家庭と異文化間教育研究
 はじめに
 1.「場」としての家庭を軸とした問題提起
  1.1 与えられた課題
  1.2 対象横断的な「場」としての家庭
 2.乳幼児期と異文化間教育
  2.1 保育の国際化
  2.2 乳幼児の異文化間教育研究の学問的偏り
 3.異文化間教育的「場」の増加
  3.1 社会の多文化化による「場」の増加
  3.2 概念枠組みによる射程の増加
 4.学会誌から見た乳幼児期の異文化間教育研究
 5.異文化間教育における「国」
  5.1 「場」としての家庭――国際比較研究
  5.2 「透けて」見える家庭の「場」
 6.開かれた乳幼児の異文化間教育研究
  6.1 特定領域化からの脱却
  6.2 外に開かれた異文化間教育研究
 結びにかえて

第2章 小学校と文化接触――文化接触の場としての教室の変革
 1.文化接触の場としての教室
  1.1 日本の小学校と教室に現れた国際化の波
  1.2 海外・帰国児童生徒の問題と日本の教室
 2.教室自体の問い直し
  2.1 異文化間的視点からの問い直しへ
  2.2 外国人児童生徒の増加と教室の問い直し
 3.多文化共生の学校文化づくりとしての教室
  3.1 多文化共生の学校づくりへの方向性
  3.2 多文化共生の学校文化づくりへの実践と戦略
 4.越境する子どもたちの居場所と大陸を越えた学び合い
  4.1 越境する子どもたちと「居場所」
  4.2 大陸を越えた学び合いと居場所――これからの異文化間的視点からの実践として

第3章 中学校・高校と文化接触
 1.〈場〉を形成する教師のまなざし
  1.1 教師の解釈・実践が生みだす生徒の〈現実〉
  1.2 〈指導〉による権力関係の維持
 2.〈場〉を生きる生徒
  2.1 学校における生徒のサバイバル
  2.2 学校適応の分化現象
  2.3 進路志向と〈場〉の意味づけ
 3.〈場〉の変化に向き合う教師
  3.1 生徒の多様化に対応を迫られる現場
  3.2 〈文化〉と〈権力〉の問い直し
  3.3 対立・葛藤を経た「公正さ」の深まりと教師の発達
 4.まとめと課題

第4章 外国人学校等
 1.ブラジル人学校と文化接触
  1.1 本節の目的
  1.2 ブラジル人学校に関する研究動向
  1.3 新たな研究視点の導入
  1.4 異文化間教育学としてのブラジル人学校研究
 2.朝鮮人学校・中華学校と文化接触
  2.1 本節の課題と構成
  2.2 『異文化間教育』における研究の不在とその背景
  2.3 関連学会等の先行研究――その空間に何を求め見出したのか
  2.4 朝鮮学校・中華学校へのまなざしのこれまでとこれから

第5章 大学・日本語学校と文化接触
 1.時系列から見た大学および日本語学校を取り巻く状況の変化
 2.場の特徴
  2.1 大学という場と留学生
  2.2 日本語学校という場と日本語学校生(就学生)
 3.個と場の影響関係から見た研究内容の分類
  3.1 場が個または集団に影響を与える視点
  3.2 場が個と個の異文化接触、または集団間の異文化接触に影響を与える視点
  3.3 個と個の異文化接触、または、集団間の異文化接触が場に影響を与える視点
  3.4 個または集団が場に影響を与える視点
 4.考察と展望

第6章 職場と文化接触
 1.異文化間教育において職場やキャリアという課題を扱う意義
 2.これまでの研究の概観
  2.1 留学生の就職活動についての研究
  2.2 外国人社員に関する研究
  2.3 海外派遣から帰任した日本人社員に関する研究
  2.4 外国人企業研修生、外国人研修生・技能実習生らに関する研究
  2.5 外国人大学教員に関する研究
 3.今後の課題と展望

第7章 地域社会と文化接触
 1.地域における外国人を取りまく状況
 2.「ネットワーキング」という観点からの検討
  2.1 ネットワーキングの動的な把握
  2.2 キーパースン、メディエータの役割
  2.3 地域ネットワーキングにおける「学習」について
 3.「連携」という観点からの検討
  3.1 「関係の再構築」としての連携
  3.2 「連携」の研究への課題
 4.「当事者性」という観点からの検討
  4.1 当事者性と構築性
  4.2 「多文化共生という言葉がマイノリティから発した言葉ではない」ことへの注目
  4.3 当事者性についての研究
 5.「場」そのものを動的にとらえるという観点からの検討
  5.1 「居場所づくり」の実践
  5.2 動的な場のとらえ方――「流れ(フロー)」と「渦」
  5.3 時間軸との関わりでの「場」のとらえ方
 6.課題

第8章 社会教育関係機関と文化接触
 1.社会教育の歴史的理解と異文化間教育
  1.1 日本の社会教育の歴史的理解
  1.2 戦後日本の社会教育の変遷
  1.3 日本における社会教育に関わる問題の措定
 2.社会的包摂・統合のための支援としての異文化間教育と社会教育
  2.1 社会教育における異文化間教育へのアプローチ
  2.2 異文化間教育における社会的包摂・統合支援の観点――「自立」を中心に
 3.場のあり方――当事者の権利の拡充や参画の取り組み
  3.1 学習権の保障の観点
  3.2 社会教育関係施設などでの実践から
 4.支援者・専門職性との関連――コンピテンシーとしての異文化間能力
  4.1 支援のあり方、専門性について
  4.2 支援の実践の中での議論
 5.まとめ――人権としての社会教育・異文化間教育

第9章 海外の場と文化接触
 1.海外の場と異文化間教育
 2.海外の場を対象とする研究論文の抽出と分析枠組み
  2.1 研究論文の抽出
  2.2 分析の枠組み
 3.海外の場を対象とした異文化間教育研究の全体的な傾向
  3.1 理論的研究と実践的研究
  3.2 異文化間教育の個人・集団・構造レベルと対象領域
 4.場の視点からみる海外の異文化間教育研究
  4.1 海外の教育制度・政策・実践という場
  4.2 海外の文化接触としての場
 5.考察
  5.1 海外の場における異文化間教育研究の成果
  5.2 海外の場における異文化間教育研究の課題
 6.まとめと今後の展望

終章 文化接触の場としてのダイナミズム

 参考文献
 索引
 あとがき
 執筆者紹介

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