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相談の力
本体2,400円+税
ISBN 9784750342993
判型・ページ数 A5・212ページ
出版年月日 2016/01/30

相談の力

男女共同参画社会と相談員の仕事

市町村、男女共同参画センター、福祉事務所などあちらこちらにある相談の窓口。私たちの生活になくてはならないものだが、援助や支援、面接という行動の添え物として扱われ、相談とは何かについての議論はほとんどされてこなかった。それは社会にとっての損失であるという問題意識のもと、相談の知を継承すべく企画されたのが本書。相談のパイオニアたちが自らの実践を通して、相談の専門性や本質について語る。

 

【執筆者一覧】

須藤八千代(すどう・やちよ)
愛知県立大学名誉教授。NPO法人ウイメンズボイス副理事長。主な著者に『相談の理論化と実践――相談の女性学から女性支援へ』(新水社)、『婦人保護施設と売春・貧困・DV問題』(明石書店)、『社会福祉とジェンダー』(ミネルヴァ書房)以上共著。『ソーシャルワークの作業場――寿という街』(誠信書房)、『増補 母子寮と母子生活支援施設のあいだ』(明石書店)以上単著。訳書にレナ・ドミネリ『フェミニストソーシャルワーク――福祉国家・グローバリゼーション・脱専門職主義』(明石書店)がある。

土井良多江子(どいら・たえこ)
元横浜市ケースワーカー(婦人相談員)。その間「横浜婦人母子問題研究会」を主宰し民間シエルター「ミカエラ寮」開設に関わる。1997年から2000年まで横浜男女共同参画相談センター総合相談員。NPO法人「福祉マンションをつくる会」常任理事を経て、現在「里山コミュニティ研究室」主宰。著書(共著)に『子どもための離婚講座』(有斐閣)、『相談の理論化と実践――相談の女性学から女性支援へ』(新水社)がある。

新堀由美子(にいぼり・ゆみこ)
男女共同参画センター横浜(管理運営:公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会)相談センター担当課長。性暴力防止ネットワーク「StaRTかながわ」会員。横浜市内の民間企業で5年勤務したのち、1997年に財団入職。「働く女性のための相談」「性別による差別等の相談」「心とからだと生き方の総合相談」等の相談部門で経験を積む。

丹羽麻子(にわ・あさこ)
元・三重県男女共同参画センター職員。2007年度より相談事業グループリーダー。2011年3月末から2年間、福島県郡山市に在住。NPO法人ウィメンズスペースふくしまの設立に関わり、内閣府「女性のための電話相談ふくしま」拠点責任者をつとめた。2013-2015年度に復興庁男女共同参画班政策調査官。NPO法人日本フェミニストカウンセリング学会認定フェミニストカウンセラー。論文に「東海地区『男女共同参画をすすめる相談事業研究会』の試み」(『フェミニストカウンセリング研究』Vol.8、日本フェミニストカウンセリング学会編、2009年)など。

方こすも(ばん・こすも)
東京外国語大学東南アジア学科卒業後、外資系企業勤務等を経て、社会福祉法人障害者総合福祉施設アガペセンター生活支援員・アジア交換研修プログラム職員、2012年-2014年まで(財)韓国女性人権振興院移住女性緊急支援センター相談員、現在、社会福祉法人いきいき福祉会 ラポール相談員、社会福祉士。

浜田房子(はまだ・ふさこ)
筑波大学大学院教育研究科修士課程修了。精神保健福祉士。横浜市のソーシャルワーカーを15年経験したのち、2002年に個人の相談室を始めた。中学・高校のスクールカウンセラーの経験もある。共著に『社会福祉のなかのジェンダー』(ミネルヴァ書房)がある。

市川季夫(いちかわ・すえお)
1946年生まれ。日本福祉大学卒業。名古屋市のソーシャルワーカーに33年従事する。2005年、名古屋家族相談室を開設し、室長。名古屋市男女平等推進センター相談室男性相談員。日本福祉大学、人間環境大学など非常勤講師。主な共著・論文に『医療福祉相談ガイド』(中央法規出版)、『21世紀の社会福祉実践 何を守り、何を切り拓くのか 下巻』(日本福祉大学同窓会他編、あけび書房)、「DVを主訴とした夫婦の面接」(『家族療法研究』Vol.28、No.3)等がある。

横山麻衣(よこやま・まい)
首都大学東京大学院単位取得退学(社会学)。現職は千葉大学子どものこころの発達教育研究センター特任研究員。研究の関心はジェンダー、性暴力、市民活動・NPO、質的比較分析など。男女共同参画センターの相談や、DVサバイバー支援のNPO法人の活動にも携わる。主な論文は、「『性暴力が人格を侵襲する』とはどういうことか――『性=人格』議論とゴフマンの社会学」(『ソシオロジ』Vol.57、No.3)、「性暴力サバイバーの語りの比較――質的比較分析法『MDSO-MSDOアプローチ』の可能性」(『書評ソシオロゴス』No.9)。

 まえがき

第1章 相談とは何か――相談論試論[須藤八千代]
 Ⅰ 相談の女性学
  男女共同参画センターと相談事業
  「日常生活での困りごとや悩みなど、気軽にご相談ください」
  総合相談の経験
  相談ということば――その重大性
  相談の二次的被害
  報告書「21世紀型の新しい相談をめざして」
 Ⅱ 相談とは何か――その哲学、理論、方法
  「相談援助」と訳されるソーシャルワーク
  援助は非対称性
  相談の進化
  精神科医が考える方法としての面接
  ソーシャルワーカーと面接
  相談は面接か、面接は相談か
  相談という臨床哲学

第2章 総合力としての相談[土井良多江子]
 婦人相談員の経験から見えてきたこと
 相談の新しいステージへ
 相談のゆらぎ
 相談のシステム――相談の組織的バックアップ体制
 相談システムの2層構造
 セルフコントロール、リスクマネージメント、シミュレーション
 リスクマネージメントとシミュレーションの実際
 相談員に対する組織(相談室)としての支援体制
 相談を支える相談支援システムのもつ意味
 相談の総合力
 相談とことば――ことばは相談の命

第3章 システムに支えられた相談事業――男女共同参画センター横浜 相談室の今[新堀由美子]
 開設から現在まで
 相談室の1日
 公的サービスとしての相談事業
 人材開発
 地域連携
 システムを耕す相談員
 人間性、指向性
 相談技術
 関連知識
 利用者にとっての相談の意味
 相談のこれから

第4章 災害と相談――災害時女性相談の実践と意義をめぐって[丹羽麻子]
 災害時女性相談の曖昧な位置づけ
 東日本大震災での女性相談事業の展開
 災害時女性相談の事業根拠と相談スタンス
 災害復興対策としての女性相談をどう準備するか
 実施体制の整備
 よりよい復興のために

第5章 移住女性と相談――韓国移住女性支援センター相談員の経験[方こすも]
 はじめに
 韓国移民政策背景と移住女性緊急支援センター
 移住女性と多文化家族
 外国人女性相談の経路
 異文化と女性
 多様な移住女性相談員
 外国人女性の相談事例
 外国人相談の要点
 おわりに

第6章 街の小さな相談室から[浜田房子]
 相談室の風景
 相談の場で起こること
 生活技術としての「相談」
 相談援助と向き合う
 出会いとつながりを求めて
 私にできること
 問題とは何か
 相談の力
 人間に内在する力

第7章 男性相談の現状と課題――男だって悩むし相談したい[市川季夫]
 はじめに
 男性の生きづらさ
 男性相談の芽生えと広がり
 ある地域での取り組み――名古屋の場合
 相談室での取り組み
 相談の実際
 名古屋市男性相談の概要
 今後の男性相談に向けて
 おわりに

第8章 相談員の労働環境――男女共同参画センター全国調査結果から[横山麻衣]
 はじめに
 なぜ労働環境の調査なのか
 調査概要
 相談員の労働環境
 運営側に着目して
 男女共同参画センターの課題

 あとがき

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